背景
倉庫業や製造業では、以前から自動化が進んできました。人がやりたくない、あるいはできない仕事を自動化することは、今に始まったことではありません。しかし、自動化の形態や用途は、新しい技術の開発とともに変化し、成長しています。従来の多くの自動化形式はインフラストラクチャの改装が必要ですが、これにはコストがかかり、運用にかなりのダウンタイムが発生する可能性があります。 無人搬送車（AGV）はこれらの課題を解決しようとしましたが、自律移動ロボット（AMR）はAGVがやろうとしていることを完成させています。
インタラクトアナリシス(Interact Analysis)は、今後数年間で（2020年から2025年にかけて）導入されたAGVおよびAMRの台数がほぼ6万から86万（その時点で合計210万）に大幅に増加すると予測しています。言い換えれば、2020年に9,000を超える顧客拠点が2025年に53,000となり、年を追うごとにAMRのシェアが拡大していくと予想されます。
成長は凄まじいですが、2025年までに市場全体の30％未満しか占めていません。さらなる成長の余地は大きいですが、「なぜ多くの企業がより早く市場に参加しないか 」という疑問が湧いてきます。
AMRのメリット
生産性
AMRを業務に導入している事例を見ると、生産性が明らかに向上していることが分かります。ほとんどの場合、ピッキング生産が100％〜200％（2倍〜3倍）に増加します。 伊藤忠ロジスティクス中国の物流センターでは、AMRが導入された後、ピッキング効率が2.13倍に向上しました
人件費の削減
人件費は世界中で上昇しています。消費者の需要とEコマースが成長し続けるにつれて、労働者の需要はますます激しくなっています。 自動化によって人件費が削減され、特に繁忙期における人手不足の悩みから企業が解放されます。
柔軟性
AMRは最も柔軟性の高い自動化方法です。どのような環境にでも適応し、インフラの変更も必要なく、顧客のニーズに応じて拡張または縮小が可能です。
精度
人為的ミスは収益の損失の主な原因とされています。通常、間違った商品をピッキングしたり、在庫の余剰や不足に気づかなかったりします。AMRはエラー率を低減させ、リアルタイムの在庫データを収集します。これにより、倉庫管理者は、在庫を追加するタイミングをより多くの情報に基づき判断できるようになり、時間と費用の両面を節約することができます。
安全性
2019年の米国労働統計局によると、業務災害が多い上位10職種のうち、手作業労働者、資材運搬者、ストッカー、オーダーフィラーは21％を占めていることがわかります。 これらの職業の中で最も一般的な怪我の原因は、マテリアルハンドリングです。さらに、手作業労働者と、資材運搬者の休業日数が最も多かったです。AMRは材料を搬送することで、作業者の負担を軽減し、1日の平均歩行距離も短くします。
倉庫が何を待っているか?
AMRは他の自動化方法ほど高価ではありませんが、多くの人が「安い」ように思われません。 これまで手作業に依存してきた倉庫は、いくつかの理由で切り替えを躊躇しているかもしれません。しかし、マッキンゼー・アンド・カンパニー（McKinsey & Company）によると、「多くの人が最も広く挙げている課題は、圧倒的にロボット導入によるコストだ」とされています。
ここ数年、視覚とセンサーに依存した自律型AMRは、ロボット1台あたり3万ドル前後で販売されてきました。情報源により、アナリストは2025年までにコストが20％から65％で下がると予想しています （ボストン・コンサルティング・グループ（Boston Consulting Group、BCG）は2025年までに20％の減少、アーク社（ARK Invest）は65％の減少を見込んでいます)。 不確実性があるため、消費者にとっては簡単なことではありませんが、アナリストは時間が経てば安くなると考えられます。
一見すると、倉庫が将来的により安価なAMRを手に入れたいと考えるのは当然であります。しかし、分析すると、現在の技術を採用し、今後数年間の報酬を得るより、待つほうがコストがかかるだけです。
待つのにコストがかなりかかる
この部分では、米国の倉庫業界の労働力と賃金の傾向を見た上で、10年間の潜在的なコストを検証するために、3つの異なるシナリオを小さな倉庫に適用します。すべての労働力および賃金データは米国労働統計局から収集されたものであり、特に明記されていない限り、平均値を記載しています。
2014年以降、倉庫および保管の従業員数は比較的一定の割合で増加の傾向にあります。毎年、労働力が8％〜12％で増加しています(2021年まで、今のところ5％の成長率にとどまっています)。
これは業界が成長していることを示すものですが、それだけではどの程度成長しているかはわかりません。そのためには、消費者の需要に追いつく業界で必要な仕事の数を確認するために、欠員にも目を向ける必要があります。
労働力不足を見ると、一貫性はないものの、増加傾向にあり、格差が広がっていることがわかります。 これは、製造業、小売業、建設業、卸売業など、サプライチェーンに関わる多くの仕事にも言えることです。
つまり、倉庫業や、倉庫業と密接に関連する業界は、問題が深刻化しているのです。 オペレーションを最大限の出力で維持するために必要な労働者の数は、利用可能な労働力を上回っています。多くの人が、オートメーションが人々から仕事を奪っている、あるいは奪うだろうと信じている。しかし、実際にはその逆で、消費者の需要が自動化と雇用の増加を引き起こしていることが観察されます。自動化のレベルは、労働力の格差是正に必要なレベルにはまだ達していないのです。
この格差は、より高い賃金と福利厚生を提供するという雇用者間の競争の激化につながります。従業員に対する需要などの変動要因から、2015年以降、倉庫および保管の従業員数の年間平均時給は0.50ドルから1.00ドル強まで上昇しています。
ますます高価になる労働者の需要が高まるにつれて、手作業で倉庫をフル稼働させるのはあまりにもコストがかかりすぎるようになっていきます。AMRを労働力に統合することで、労働力の格差に対処し、需要を満たすための費用効果の高いソリューションを倉庫に提供します。